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夏の名残り、ぽたぽたとしたたり落ちる汗。
九月半ば、強い日差しを受けながら、私はわりと急な山道を一人で登っていた。
荒い息を整えるために少し立ち止まる。ザックを肩から下ろし、中に入っている水筒を取り出し、喉を潤す。
あと半時間ほど歩けば山頂に到着するだろう。
それにしても暑い。
水は多めに持ってきたが、下山するころには空になるだろう。
私はスマホを取り出し、時間を確認する。
午後一時過ぎ。
順調だ。この暑さの中、悪くないペースで歩いていた。
私は四十過ぎの男性。
独身。
結婚はしたことがない。
どうも女性には縁がないようだ。
とはいえ仕事に人生の全てを捧げる人間でもない。職を転々とし、今は気楽な清掃員。
では趣味に情熱を傾けているのか。
残念ながら、そういう趣味もない。
唯一の趣味らしき趣味が今まさに実行している登山くらい。
登山といっても北アルプスや富士山など、大きな山には登ったことはない。テント泊や山小屋泊などもしたことはない。日帰りで登れる近場の低山がほとんどだった。
だいたい月に一、二回。気分転換の散歩の延長みたいなものだった。
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