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「あらまあ、今日はまた派手にやったわねえ……」
「……」
とりあえず痛かったから保健室に来た。中峰先生に手当てされながら、さっきの雪音の顔を思い出していた。
ちっ、何であいつの顔が浮かぶんだ。
「志藤くん、今日は特にご機嫌斜めみたいね」
「……なんすか、それ」
中峰先生は俺の言葉には答えず、手当ての続きをしてくれる。
「志藤くんって本当によく怪我するわよね」
「そっすか?」
「ええ、他の生徒よりも圧倒的に多いわよ」
「……」
子供の頃から、怪我することが多かった。けど、その度に雪音が手当てしてくれていた。だから、俺は怪我しても平気だった。
怪我したときは泣きそうになっても、雪音は手当てしたあと、いつも笑ってくれてたから。
「……」
「志藤くんは、今は心にもおくすりが必要かしらねえ」
「え?」
「傷ついてるって顔してる」
何て返せばいいのかわからなかった。傷ついてるんだとしたら、俺は何に傷ついてるんだ。
「……はい、手当て完了!」
手当てしてもらった手を眺める。
「……ありがとう、ございます」
……いつもなら。
いつもなら手当てしてもらったあとは、そのまま出ていくのに。
今日は、どうしても去りがたかった。
「ふふ、どうしたの?」
「……先生。俺、昔から怪我ばっかしてて……」
気づいたら、そんな風に話し始めていた。
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