侑斗の一言

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侑斗の一言

俺が泣き止んだ頃、おばさんは口を開いた 「昨日手術をして何とか命は繋いだの....でも今日が山場だって言われたわ...」 「そんな...!!!」 「いきなりこんな事言われてもね....。私もそうよ。電話が来て事故にあったって言われて...これよ?」 「なにがなんだか....。顔には傷があってあんなに体中に線がたくさんあって...痛かったよね..怖かったよね...。代われるなら代わってあげたい 」 「......ッ、ウッ......ッ」 「警察が言うには運転手はブレーキ痕が無いことから意識が無くてそのまま赤信号を走っていったんだろうって...。その運転手もここに運ばれたらしいけど、亡くなったらしいわ」 「あと、これ」 俺の前に出されたのは血のついた紙だった 「これ....」 それは内定と書いてあった紙だった 「聞いた話だとこれを握り締めていてなかなか手を開かなかったらしいの。もしかした侑斗君に見せたかったのかもしない」 「あの子ね、侑斗君には弱いのよ」 「覚えてるかしら?大学を決める時の進路希望調査票のこと」 進路...? あぁ、そういえば航平のやつ頭良いのに俺と同じにしてたな 「はい」 「あの後の三者面談の時にね、先生にもっと上の大学に進学するように言われてて、私もそう言ったのよ。でも決して首を縦にはふらなかったわ。それで家でも私と喧嘩になったりもしたの」 「でもその数日後に航平がいきなり当時の成績よりいい大学に行くって言い出したのよ。そんな上の大学に行けとは誰も行ってないのに本人は真剣で、本気で勉強を始めたの」 「その大学にも受かって少しした頃聞いたことがあるの『どうしてより上を目指したの?』って。そしたらね、『侑斗が自慢の親友になってって言ったから』って。私達がいくら言っても聞かなかったのに侑斗君の一言で変わったのよ」 「そして、一流企業に内定もらって病院の近くで事故...だからこれは侑斗君に見せたかったのよ」 「航平...」 その会社の社名を知らない人がいないほどの 有名で大きな会社の内定だった 俺があの時に言ったたった一言をずっと...? 俺だって言われて思い出した様な一言だったのに... 航平はその言葉のために? いい大学に行って、いいとこに就職 全部俺の...自慢の親友になるために...? その大学で航平は子供作る羽目になって 内定貰ったら事故って... なんだよそれ.... それなのに...俺とあの家にこのまま居ようとしたの? 航平...お願いだよ、目を覚ましてよ... 俺、内定貰ったら航平に伝えたいことあったんだよ? 目を覚まして聞いてよ 俺の告白。
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