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航平の計画
「それでは手術を始めます」
…
「…………」
トクン…
トクン…
「…………」
病院からドナーが見つかったと連絡を受け
俺は手術を受けた
嬉しいはずなのに、どこか悲しい...
ずっと長く生きたくて待っていたドナーが見つかったのに
長生きする理由を見失っていた
大好きな人が居なくなった...
気持ちも伝えずに逝ってしまった
俺を残して
ずっと近くにいたのにもういない
「なんで....先に死ぬかもしれなかった俺が...生きてるんだよ...」
退院して家に戻って少しした頃、
航平のおばさんから連絡を貰い会うことになった
「忙しいのにごめんね」
「いえ」
「これね、航平の鞄なんだけど、中に旅行のパンフレットが入ってたの。いろいるメモとか付箋があって侑斗君の名前もあったから多分一緒に行く予定だったのかしら?」
「旅行…?いえ、あの頃は入退院も多かったので旅行などの話はしていません」
「そうなの?じゃあこれは航平が勝手に計画してたのかしら?見てみる...?」
航平がもし俺との旅行を計画していたのなら見ないわけない!
俺の事を思ってくれたのだから
「はい!」
そこにはいろいろな付箋が付けてあった
「(航平の字だ…)」
「あの...これ貰ってもいいですか?」
「勿論!そのために持ってきたから」
「あ、あとね。これも....」
「これって...」
「そう。ドナーカード」
俺は裏面を見た
「!!!」
「心臓以外にバツが付いてるの。侑斗君と一緒にいて心臓なら誰かにあげてもいいと思ったのかもね」
「じゃ、じゃあ!今もどこかで航平の心臓は....」
「そうね。脳死だから誰かの元で航平の心臓は今もきっと動いて生きてると思う」
「教えてくれてありがとうございます。これだけでも嬉しいです。航平はどこかで生きてる」
それだけでも充分だった
航平はどこかで生きてる
こんな嬉しいことは無かった
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