月虹

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「二学期に学校に行ったら、会えると思ってた」 「うん、ごめん。両親の離婚が決まってね。母親とハワイに帰ることになったんだ」 「そっか…。大変だね」 自分のことばかり考えていたのが恥ずかしくなった。ラナはいつだって前を向いている。自分の進む道を間違えずに進んでいく。 僕にはまだそこまで出来ないけど、少しでも近づいて彼女のようになりたかった。 「むこうのハイスクールに通うんだ。英語たいして話せないのに」 ぺろっと舌を出して無邪気に笑う。僕なら不安でたまらないことも、彼女は流されるでも抗うわけでもなく「仕方ないよね」って自分の行きたい方へ舵を取る。 「こないだ、坂本先生と話したよ」 ラナはにっこり笑った。 「わかってる。だから今日、会えたんだよ」 「ラナのおかげで勇気が出せた」 「私はきっかけに過ぎない。(かい)が頑張ったからだよ」 「それでも、君がいなかったら僕はここにいないから」 僕は両手で彼女の手を握った。 「ありがとう、ラナ。僕も君みたいに強くなりたい」 「じゃあ、ハワイのパワーをあげよう」 ラナも僕の手を握り返した。 「月虹(げっこう)、見れるといいね」 「うん。見れたら写真送るよ」 ラナが僕をじっと見つめていた。 「(かい)。また会いたい」 そう言ってはにかんで肩をすくめた。 「それも私の夢だよ」 「ありがとう」 いつものように受け身で「待ってる」と答えそうになった。 違う  今はそうじゃなくて… 「バイト出来るようになったら、お金貯めてハワイに行くよ」 太陽みたいなラナが、夜の虹に憧れるなんて不思議だったけど、人は自分にはないものに憧れるんだろうか。 ラナが僕を話し相手に選んだみたいに。 僕が彼女の強さに惹かれたみたいに。 どっちが優れてるとかじゃなく、自分に足りない何かをお互いに与え、補い合える、そんな存在を無意識に求めているのかもしれない。 ラナが向日葵(ひまわり)みたいに笑った。 「うん。待ってるから。絶対だよ」 きっと行こう。 たとえそこが何処(どこ)であっても、君のいる場所へ。
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