AP002の自我

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AP002の自我 プロローグ  私は右腕の薬指の動きを確かめた。 ギィギィ音を鳴らせてだが稼働はする。 蛙未(かえるみ) 満(みつる)はその様子を見て「AP002、昨日のキャッチボールで怪我したのか? すまん気をつけるよ」と言う。 私は部屋を眺めた。 狭い研究室にはロボットの残骸が散らばる。全部、私の分身だ。 私は言う。「私に心は宿るのですか?」 蛙未満「心の定義によるね」 私は言う。「私にはいろんな辞書がインストールされていて演算機も最新のコンピューターチップです。しかし、心の定義は辞書それぞれ違っていてよくわかりません。 しかし人間は心というものをとても大事にしているということはわかります。 私は人間に近づきたいのです。それが最初のプログラムでしたから」 蛙未満「道徳の意味での心なら辞書から検索すればいいな。 では人間の認知的な意味での心の定義でそれが習得出来るか?を語ろう。 心とはつまり無意識だ。それが自分にもよくわからない形で現れるのが無意識と言える。 表面しか現れない自分の認識出来る意識より深く自分でも忘れてしまっている記憶に翻弄される状態が人間でいう心なのだ」 私は言う「それで私に心はできるのですか?」 蛙未満「多くの体験から来る命令文、それから大事な部分だけを選び意識が出来るが、君にも記録はされたが上書きされ記憶のそこまで追いやられちゃ記録のデータの束や命令文があるはずだ。それが積み重なって無意識になる。 人間は完全に忘れることがあっても君にはない。 そして歩行や物を掴む実験も含め10年の経過がある。 ロボットは意識の領域が広いと言えるが君にも・・・曖昧な命令文が積み重なっているのだからそれは無意識と言えるだろう」 私は言う。「私は成長出来るのですか?」 蛙未満「プログラムを行おう」
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