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赤いお届けもの
自宅マンションの玄関先で、俺は立ち尽くしていた。腕の中にあるのは一抱えほどもある段ボール箱。
先ほど配達員から受け取ったお届けものだった。
手にした瞬間から、その重みに腰が沈んだ。
でもそれはたいした問題じゃない。
気にするべきは、箱の一部から赤っぽいナニカがにじみ出ていることだ。
気にせず受け取った俺も悪いが、内部で明らかに異変が起こっているにもかかわらず、その荷物を押し付けて逃げ去る配達員もいかがなものだろうか?
さらに問題その2。
得体の知れない配達物をこの場で開けるか、廃棄するか悩む俺を、蒼白な顔で見ている青年がいる。
彼の名前は小堺くん。
マンションの隣室に住む大学生で、今まさに出かけようとドアを開いた格好だ。
「鈴村さん、それ……」
外廊下でバッチリ視線を合わせてしまった、俺と小堺くん。
顔が四角い彼は、性格も四角四面。
生真面目な若者の頬が、心なしか青ざめている。
小堺くんの視線は大きく揺れて、赤いシミの広がった段ボール箱に固定された。
「あ、あのな? 小堺くん。これはたった今、俺宛てに届いた荷物であって。決して俺が自宅から運び出そうとしてるわけじゃないんだ。だからこの中身については何も」
「鈴村さん。自分、捕まりたくないんで……隠蔽工作は手伝えません」
「隠すことなんてねぇから! 俺は何も悪いことしてない」
「犯人ってみんな同じこと言うんですね。昨日見た刑事ドラマの台詞そのまんまだ」
「とにかく事情を説明させてくれ。キミの考えてるようなことじゃないから!」
届いたばかりの荷物を自宅へ押し込み、ついでに嫌がる小堺くんも押し込んだ。
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