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箱の中身は水筒、タオル、うちわ、Tシャツその他もろもろ。
そのすべてが赤い液体でドロドロに汚れている。
グロテスクな見た目をつくっているのは、同梱された大量のトマトである。トマトが潰れて箱の中はおろか、箱の外にまで染み出していたのだ。
「なんでこんなことになってるんですか」
「あー……それ、聞いちゃう? じゃあ語らせてもらうけど」
「手短かにお願いします」
「実はこの荷物の送り主、ちょっと変わっててさ。熊本に住む俺の母親なんだけど、かなりクセが強い」
俺は段ボール箱ひとつ挟んで、小堺くんと向き合った。
「世に言う肝っ玉母ちゃんってやつで。俺の家、早々にオトンが亡くなったからさ、オカンは女手ひとつで俺を育ててくれたんだ。だからクセも強くならざるを得なかったんだと思う」
「クセ強と母子家庭の因果関係が分かりませんが」
「オカンのいる故郷を離れた俺は、東京へ移り住んだ。ひとり暮らしをはじめて早8年。ここ最近、オカンから送られてくるものがおかしいんだ」
「どうおかしいんですか」
「この惨状を見れば分かるだろ?」
「水筒にタオル、うちわ、Tシャツと……トマトですか。送られてきた物はマトモですけど、梱包は工夫すべきでしたね」
せめてトマトがつぶれないように。
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