赤いお届けもの

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俺はトマト汁でテロテロになった手紙を、そっとつまみあげた。 『純平へ。元気にしてますか?』ではじまる。 続きは汚れで確認できず、かろうじて『故郷の味を送ります。母より』の締めくくりだけ読むことができた。 「故郷の味どころか、色と匂いまで染みついちゃってますね」 うちわとTシャツにも赤色がベッタリだ。 うちわはもうだめだ。捨てるしかない。 Tシャツのシミは洗えば落ちるだろうか? どちらにしても着る気が起きない。 「なんでこんなもん送りつけてくるんだ……」 後始末のことを考えゲンナリしていると、小堺くんが純心な眼差しで俺を見た。   「親ごころじゃないすか? そろそろ夏も本格化しますし、身体に気を付けて過ごしなさいというメッセージでしょう」   「そうかあ? まあそうかもしれないけど。俺、心配されてんのかな。しばらく顔見せに行ってなかったから?」 「いつまでもあると思うな親と金、ですよ」 「この場合、ちょっと使いどころが微妙な気もするけど……まあ。肝に銘じとく。ありがとな小堺くん」 俺は小堺くんの手に、つぶれていないトマトをひとつ握らせた。迷惑料兼おすそ分けのつもりだった。
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