ドキドキなお届けもの

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ドキドキなお届けもの

それから3日後のことである。 ピンポーンとチャイムの鳴る音が聞こえた。 テレワークを一時中断してインターホンで確認した俺は、眉をひそめた。 今度は郵便局の配達員だ。 いったい何を届けに来たんだ? 母のつぶれたトマト事件は記憶に新しい。 まさかまた母からということはないだろう。 と思って受け取った郵便物を見ると、差出人は母だった。 嫌な予感を覚えつつ、封を切ってみる。 中に入っていたのはお見合い写真と釣書だった。 赤沢玲子、33歳。 住まいは熊本県八代市。 俺より3つ上。趣味は演劇鑑賞。 面長でスッキリした顔立ちの女性。 しばしこの書面を無言で見つめた。 赤沢さんに文句をつけるつもりは毛頭ない。 実物が写真のとおりなら、優しそうだしちょっと気になる。 でもあいにく、俺はまだ結婚したいと思ってない。晩婚化が叫ばれる昨今、独身の30男なんてゴロゴロいる。俺はもう少し自由を謳歌していたいのだ。 同封された手紙を開く。 前回はトマト汁のせいでじっくり読むことができなかったが、この便箋に刻まれた右肩上がりの文字は、間違いなく母の筆跡だ。 純平へ 知人から素敵なご縁を紹介していただいたので、あなたに送ります。 ちなみに先方へはすでに、あなたの写真を渡してあります。 良い返事が聞けるのを楽しみにしています。 母より。 母より。……じゃねーー!! 勝手に見合いの話を進めるな。 「だいたい俺、ここ最近写真なんて撮ってないぞ……? オカンはいったい何年前の写真を渡したんだ」 俺ももう三十路のいい歳したおっさんだ。 意図せぬ写真詐欺疑惑で恨まれたくない。
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