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オカンをお届け
決意した俺の耳に、再びチャイムの音が飛び込んできた。
もう何が来ようと驚かない。
俺の気持ちは固まっている。
母と、自分自身の過去に向き合うのだ。
インターホンの受話器を取り上げた俺は、
「純平、いるんでしょ? 開けてちょうだい、母ちゃん暑くて死にそうたい」
「オカンーー!?」
思いのほか早くオカンと向き合うことになった。
来たよ、ついに本人が来ちゃったよ。
動揺のあまりインターホンの受話器を取り落としそうになったが、すんでのところで踏みとどまった。
急いで玄関へ向かい、震える手でドアを開ける。
「純平、久しぶりね」
そこには昔より少し小さくなった母親がいた。記憶の中よりシワが増えているけど、おおらかな笑みは相変わらずだ。
らしくもなく感極まってしまって、俺は母に歩み寄った。
「あ、あのさ俺。こっちから連絡しなきゃいけなかったのに、ごめん。今までずっと……」
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