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 それから大和くんは、無理に何かを聞いてくるわけでもなく、ただ黙って私が話し始めるのを待っていた。    "大丈夫、誰にも言わない。俺はちゃんと受け止めるよ。"  目は口程に物を言うというが、大和くんの目はそう言っているようだった。  私はそうせざるを得ないように、小学校の時の出来事をポツリポツリと話した。  さすがに充希くんとの妄想デートのことは伏せたけれど、その出来事の後から妄想や物語の世界に逃げている事、そしてたまに小説を書いていることも話した。  大和くんは「うん、うん」と、余計なことは言わずにただ聞いてくれて、私が全部話し終えた後に「そんな奴らのいるところから離れられて良かったな」と怒りのこもった静かな声で言った。  それから、ふぅーっとため息をついて、大和くんは続ける。  「やっぱりもったいないよ…世界は広いのに、そんな奴らのせいで土屋さんが自分の世界だけに籠っちゃうなんてさ…」    今度はすごく優しく静かな声だった。  大和くんは、私に閉ざした心のドアを開ける勇気をくれた。  新鮮で心地よい風がひゅるりと私の心に流れ込んでくる。新しい風だ。  「…ありがとう」  大和くんの優しさが心に染みて、ポロポロと涙が零れた。  私は、何度も何度も大和くんに「ありがとう」と伝えた。    私、大和くんが好きだ。  無謀だとしても、芽生えてしまったこの気持ちは現実(リアル)だ。    
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