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 「土屋さーん、原先生が美術準備室来いって…私も呼ばれてるの一緒に行こう…」  昼休み、クラスの一軍女子の里美(さとみ)から声をかけられた。  「あー…うん」  五時間目は選択授業で美術だから、何か雑用でも頼まれるのかな…と、私は何の疑いもなく里美と美術準備室へ向かった。だが、美術準備室には先生の姿はなかった。  よく考えれば、何でわざわざこんな狭い美術準備室を指定したのか…  私が怪訝に思っていると、美術室の方から「なんだよ、こんな所にわざわざ呼び出して…」と、大和くんの声が聞こえてきた。  「ねぇ…大和、私たち付き合わない?」  続いて聞こえてきたのは、クラスのトップオブ一軍モテ女子の真弓(まゆみ)の声だ。  え…何?告白…?  立ち聞きなんてしたくないのに、美術室側にしか出口がないため出ていくことが出来ない。里美はニヤニヤしながら二人の様子をうかがっている。  聞きたくない…  学年一のモテ女子からの告白だもん…断る理由ないよね…  でも…嫌……嫌だ…嫌だよ大和くん…  私は咄嗟に耳を塞ぐ。  でも、完全にシャットアウトすることは不可能で、二人の声は小さくなって私の耳に届いてくる。    「大和のことね、ずっと好きだった」    真弓がそう告白を続けるが、大和くんは即答で「…ゴメン、真弓とは付き合えない」と断った。  それがあまりにも即答だったので、真弓は「何でぇ?」と、食って掛かる。  「好きな子がいる」  大和くんはまた即答する。  「…え…まさか、土屋さんとか言わないよね?」  真弓の声色が変わる。  怒りを含んだ低い声だ。  え!?大和くんに好きな人が…と、ショックを受ける暇もなく、真弓の返しに驚いて、私は自分の耳に当てた手を下ろした。  今、私の名前出てきた?  
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