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私は、さらに妄想を膨らませた。
充希くんとは、まだ正式にはつきあっていないが、周りも認める仲だ。
はよくっつけと、冷やかされることも少なくない。
ある時、充希くんは後輩の女子に裏庭に呼び出されて告白された。
それを知った私は、動揺して不安になる。でも、充希くんは「心配ないよ…俺は萌音が好きなんだから…」と、私の頭をヨシヨシしてくれて…
なんて、勝手に一人で盛り上がって、ついうっかり口元が緩んでしまった。私は慌てて内頬を噛んで、何でもないような顔を作った。
それなのに、急に視線を感じてそちらに顔を向けると、別のクラスの大和くんとバチリと目が合った。
そんなわけはないのだが、何故だか急に妄想が見透かされた気になってしまって、恥ずかしさのあまり顔が熱くなった。
大和くんは充希くんと仲が良くて、時々クラスに遊びに来る。
背が高くて端正な顔立ちのクールな充希くんと、可愛いワンコ系の愛されキャラの大和くんは、校内でもなかなか目立つ二人で、私みたいな妄想女子が現実で関わることなんかない人種だ。
―――そのはずだった。
その日の昼休み、私はいつものように校庭を眺めながらお弁当を食べていた。すると、充希くんのところに遊びに来ていた大和くんが、急に私の前の席に座って、話しかけてきた。
「あのさ…」
「はひぃ!」
驚きのあまり、絶妙なバランスでつかんでいたミニトマトが箸から転げ落ちた。
ミニトマトはうまいこと弁当箱の中に落ちて、何事もなかったようにスンと弁当の彩を気取っている。
全校朝会でのこともあって、私は何を言われるんだろう…と、緊張して背筋が伸びた。
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