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 「昨日、中央図書館いたよね?」  それは思いがけない質問だった。    「はい…」  大和くんの笑顔が眩しすぎて直視できず、私はお弁当のミニトマトに視線を置いた。    「あ、まだ食べてるところなのにゴメン…いや…俺も昨日、図書館いたからさ…土屋(つちや)さんもよく行くの?あ、弁当食べて?」  「あ、はい…」    妄想ではあんなに積極的になれるのに、現実は上手くいかない。  せっかく大和くんが話しかけて来てくれているのに「あ、はい…」しか言わない感じ悪い女でしかないよね…これじゃあ…  そう思って、ちょっぴりだけ勇気を出して顔をあげると、目の前には無邪気に笑う大和くん。  左の頬にだけできたが可愛すぎて、その窪みに視線が吸い込まれる。    「土屋さんは小説とか好きなんだ?」  「はい…」  「どんなジャンルが好き?推理ものとか読む?」  「あ、割と何でも読みます…」  "それに、自分で書いたりすることもあります。"  心の中で呟いてみる。    大和くんは「マジ?じゃあさー…」と、両手で机をトンと軽く叩いて「俺の書いた小説読んで感想聞かせてくれない?」と私の耳元に顔を近づけてコソっとそう言った。  大和くんの顔が急に近づいてきて、私は顔が熱くなる。そして、息をするのを忘れた私は、水槽から出された金魚のように口をパクパクさせた。  「読書家の人に頼みたくて…いい?」  私は、コクコクと首を縦に振った。  大和くんも小説を書くんだという驚きと、どんな小説を書くのだろう?という好奇心と、人気者の大和くんとの意外な共通点が嬉しくて、断る理由は思い当たらなかった。    「わ、私なんかでよければ…」
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