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この日から私たちは、放課後に図書館で待ち合わせる事が増えていった。
ちょっと前まで、雲の上の…妄想の中だけで関わる存在と思っていた大和くんが、だんだんと私の現実な存在となっていく。
大和くんの裏表のない人懐っこい性格のおかげで、私は徐々に気を許し始めていた。
実は暇な時に妄想すること、時々それを小説にするっていうこと、私も大和くんと同じだということを話してもいいんじゃないかと思えるほどに…
「土屋さんは、実はすげー面白い人なんだね…頭の回転も速くて、言葉選びにセンスの良さを感じる!」
いつものように図書館のベンチに横並びに座って、大和くんの小説の感想やお勧めの小説の話の後で大和くんがそう言った。
「…そうかな」
「うん。だからさ、学校でももっとたくさん人と話したらいいのにって思って…勿体ないんだよなー…」
大和くんが私の目をじっと見つめる。
「……大和くんは社交的で、誰とでも楽しそうに話せて、みんなからも好かれてて羨ましい…」
不意に、本音が口をついて出ていた。
これじゃ、ただの僻みじゃない…
言ってから酷く後悔した。
それに、ついこの間まで別世界の人と思っていた大和くんを、羨ましいだなんて思っていたことに、自分でも驚いた。
「俺は面白い小説を書くためにもさ、たくさんの人と関わって、人間味みたいなものを知りたいって思って、つい観察しちゃうんだよね…だから、社交的なのは打算かも…」
そう言って、大和くんは悪戯に笑った。
「経験と、知識がやっぱり表現力を豊かにすると思うし、他人を知ることで、人間味のあるキャラが生まれるから…」
大和くんの言葉が胸に突き刺さった。
そうかな…やっぱり、そういうものかな…
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