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結城都、女子会をする
私はマグカップを手に取った。鼻孔をくすぐるやさしい花の香り。カップの中身はラベンダーティー。愛菜のマグカップからも同じ香りがしている。
一方、歌乃のカップからは、コーヒーの香りが漂う。彼女は、粉砂糖を四袋、スキムミルクを三袋開けて、マグカップの中に次々と注いだ。あきらかな糖分の過剰接種。アイドルの卵らしからぬ暴挙だ。いかにも美味しそうに、それを喉に流し込む歌乃。あの華奢な身体のどこに、砂糖は消えるんだろう……。
「――ねえ、都はどう思った?」
歌乃の暴挙に戦々恐々としていると、急に愛菜が切り出した。
私は、ハーブティーに口をつけたまま、首を傾げる。
「何の話?」
「さっきね、愛菜ちゃんと、『チームアメジスト』のメンバーについて考察していたの」
歌乃が補足する。
「そうなのよ。でね、あたし達が思うに……」
ここで、愛菜が食堂内に視線を走らせた。夕飯の時間にはまだ早いため、他の候補生の姿はない。
「困ったことに、かなりのツワモノ揃いよ。うちのチームは」
真剣な顔で何を言うかと思えば、そんなことだった。
「私としては、あんたらがそれを言うのかいって感じだけど……」
私は、思ったままのことを、素直に口から出す。続けて、素朴な疑問を投げかけた。
「ていうか、グループ対抗なんだからさ、ツワモノ揃いなら大歓迎じゃん。なんか問題なの?」
「わかってないわね、都!」
愛菜が勢いよくマグカップを置く。ハーブティーが波打って、カップの外へあふれ出した。おう……。愛菜さん、清純華憐な見た目に反し、意外に激しい一面を持っているようですね。
「確かにグループの皆は仲間よ。協力して、魅力的なチームを作りあげなきゃいけない。でもね、センターになれるのは、一人なの! そういう意味では誰もがライバルなのよ!」
力説する愛菜の隣で、こぼれたハーブティーを歌乃がせっせと拭いている。
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