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軽く咳払いをして話を本筋に戻す。
「で、彼女のどこに注目してるっていうの? やっぱり顔?」
「うん、まずひとつはそれね。そこの、ビジュアルの欄を見てみて」
愛菜に促されて、プロフィールのビジュアル欄に視線を移す。そこには『A+』と表記がある。
「ずばりトップ評価。ちなみに、ビジュアル評価で『A+』を出しているのは、うちのチームで彼女だけなの」
「え?」
私は驚いた。
「じゃあ、愛菜は?」
答えたのは歌乃であった。
「信じられないよね? 『A-』なの」
歌乃は、愛菜が『轆轤さん』に負けているのが面白くないらしい。コーヒーをちびちびやりながら、露骨なしかめ面をしている。私もハーブティーで舌を潤して、話の続きを促す。
「じゃあ、もうひとつの注目ポイントは?」
「彼女のキャラクターの強さね。さっきのオリエンテーションで都も気が付いたと思うけど、彼女、突出して目立っていた。つまり、ものすごく個性的なの。これ、タレントには一番大事な条件よ」
「確か、マイペースな不思議ちゃんキャラだっけ」
彼女の自己紹介の内容を思い出す。のんびりとした喋り方で、自分はオカルトおたくで、友達がいないのだ、みたいなことを語っていた気がする。
「彼女、素人とは思えないくらい話の運び方が上手だったわ。それに、あの手のキャラクターはアイドルファンにうけるのよね」
「あーわかる気がする。『ぼっちキャラ』は確かに自己投影しやすいよね」
私が愛菜に同意したところで、また闇からの声が挟まる。
「あの性格は絶対計算だと思う」
歌乃は、彼女にすっかりライバル意識を抱いているようだ。マウスを操作する愛菜の手に自らの手を添えて、力説する。
「愛菜ちゃんの方が遥かに魅力的だよ。なのに、二位なんておかしいよ」
「やだもう、歌乃ってば……」
照れる愛菜。なんか二人の周りにバラの花が見える。えーと、この二人はいつもこんな調子なのでしょうか。しかし、何やら気になるワードがあったので、その甘い空気を、勇気を出してぶった切ることにする。
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