結城都、女子会をする

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「えっとごめん、話の腰を折るようだけど、『二位』って何の話?」    私が問うと、愛菜はマウスを操作して、プロフィール画面からリンク先へ飛ぶ。 「んーとね――これを見て」    リンク先には『暫定人気ランキング』と見出し文字が出ている。  ファンが、各々の好きな候補生をチームから一名選び、投票するシステムで、投票は一日一回行うことが出来るらしい。毎日十七時に統計され、更新される仕組みのようだ。    八月一日時点の一位は轆轤奈々。二位は藤堂愛菜。三位には、さっき少し名前が出た神林八重。四位に雨車歌乃と並んでいる。私はというと――ビリから二番目だった。    無慈悲な数字に打ちひしがれそうな心をなんとか立て直し、私は三位の『神林八重』の名前を、指で示して言う。 「で、こっちの神林さんはどうなの?」 「うんとね」    愛菜は神林八重の名前にカーソルをあて、クリックした。  神林八重。チームアメジスト唯一の三年生。    轆轤奈々とは対照的な、ナチュラルな印象の女の子の写真が表示される。艶のある黒髪ロングヘア。意志の強そうな釣り目。鼻筋の通った凛々しい顔立ち。最年長というだけあって、大人っぽい印象。ファッションは、デニムスキニーと白シャツっていう至極シンプルなものだったけど、細身ですらっとした彼女が着ると、妙にお洒落に見えるから不思議だ。ビジュアル欄には『B+』とある。 「美人だなって思うけど――」    私は正直な気持ちを口に出す。 「アイドルって感じじゃなくない? どちらかというと、同性受けのいいタイプ」 「あ、わかってないわね、都。そりゃ勿論、女性アイドル界のメインターゲットは男性ファンよ。――とはいえ、実際は女性ファンも一定数いるの。加えて、こういう誰でも参加できるような企画の場合、所帯持ちの男性ファンの奥さんが、旦那さんに感化されて投票してくれるなんてケースもある。女性票は甘く見ちゃいけないのよ!」    饒舌に語る愛菜。私は口を挟む暇もない。
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