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十四時。コミューターは、とある施設に辿り着く。
随分長いこと走っていた。車窓はカーテンに覆われていたため、この場所はどこにあって、どんな施設なのか、見当も付かない。万能の機器であるスマホ様も、移動の途中からずっと圏外だ。
コミューターから降り、コンクリートにつま先を下ろす。
見渡すと、ここは地下駐車場みたいだ。光源は蛍光灯の無機質な光だけ。窓はない。白いラインがコンクリートに浮かび上がっていて、それに沿ってコミューターが整然と並んでいる。
スタッフに案内されて、エレベーターを降りていく。地下三階。エレベーター内に注意書きが貼ってある。
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――B二F『レッスンフロア』B三F『居住フロア』
※候補生は、一カ月の間、この施設から出ることを禁ずる!
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「A3」と書かれたプレートのかかった部屋に入室すると、ライトが自動で点灯した。
カーペット敷きの室内に、シンプルなスタンドライトとドレッサー、ローチェスト、クローゼット、広めのベッドが二台。地下だから仕方ないけど、窓はない。代わりに、蒼穹と入道雲を描いた油絵が掛けてあって、これが一見窓に見えなくもない。
広さは、四十平方メートルくらい。好きなアイドルのライブで遠征に行くとき、ネットの友達とビジネスホテルのツインによく泊まるけど、そこよりもずっと広い。ちょっとしたリゾートホテルの二人部屋くらいの広さじゃなかろうか(泊まったことないけど)。
新しい家具のにおい。傷ひとつないまっさらな室内。
窓がない閉塞感を差し引いても、そんなに悪くない。うん。なかなかいいじゃない。
そして何と言っても、同室になった彼女の存在が嬉しかった。
「ほんと、同じ部屋でよかったよね――くーちゃん」
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