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学校のチャイムに似た音が響く。同時に、部屋の前方に設置されたホワイトボードを覆い隠すように、天井から液晶モニターが降りて来る。
液晶モニターの画面には、執事服を着たシェパードのキャラクターが映っていた。
「な、なにあれ?」
「さあ?」
戸惑う複数の声。確かに奇怪な光景である。
「――ようこそ皆さん、『楽園プロジェクト』へ」
CGのシェパードの口が開いた。ボイスチェンジャーで高く加工された声が響く。電話口で身代金を要求する犯人みたいなあの声である。候補生達は呆気に取られながら、画面の人物(?)を注視した。
「私は、この楽園プロジェクトのイメージキャラクターにして、皆さんの案内役の、シェパードです。どうぞよろしく」
「よろしくお願いしまーす」
とりあえず挨拶を返す一同。
「まず、簡単に説明させていただきます。総勢三十七名の候補生は、六~八人ずつのグループに分かれ、グループごとに個別のレッスンフロア、居住フロア、エレベーターを使います」
「ぷっ……つまり、この区画を使うのは私達だけってことか……」
私は自己確認のために呟いてみた。前半の「ぷっ」は、真面目に説明するシェパードの姿がシュールすぎて、思わず吹き出してしまった声である。
シェパードの説明は続く。
「また、施設内には至る所にカメラが設置され、すべての映像はインターネットで生配信されます。その点、ご承知おき願います」
「え、まさか、トイレも?」
「やだあ」
「お風呂、トイレ、ランドリールームなどの、一部の居住フロアは除きます」
「ですよね」
「よかったー」
安堵する候補生達。
「――それと、皆さんのスマートフォンは、一カ月間、こちらでお預かりいたします。代わりに、内部間のメールのやりとりと特定のサービスのみに使用を制限したノートパソコンを一人一台支給させていただきます」
愛しき恋人よ、さらば!
私は心の中で惜別の涙を流したが、他の女の子たちはというと、それほど動揺してない様子。真剣な表情でシェパードの話を聞いている。彼女らの瞳はまっすぐで、夢を叶えるためならばどんな制約も厭わない、とでも言いたげだった。
私よりもずっと、敬虔な心持ちでアイドルを志しているのだろう。
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