その4 オシラサマ

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その4 オシラサマ

 これも───、G氏が子供の時分、確か小学校1~2年頃の話であると聞いています。  その頃G氏が住んでいた一軒家は築六十年余りの古い家でしたが、日本家屋の造りであり、古いながらもまだまだしっかりとしていました。(柱等は結構黒くなっていましたが・・・)  さて、その家の中央に位置する茶の間と呼ばれる広い六畳間には、「その2」の話にもあったように真ん中に掘りごたつがあり、冬以外はこたつの正方形の穴に蓋をして、その上にやや大き目のどっしりとした長方形のちゃぶ台を乗せ、その周りに座布団を敷いて、家族が座って食事などをするようになっていました。  その茶の間の北側の中央にはテレビ台とテレビが鎮座し、その右隣には襖が一つだけの押し入れがあり、押し入れより上の天井側には神棚が備え付けてありました。  問題は───、その押し入れの妙な構造であり、上半分は普通の押し入れなのですが、下半分が何故か空洞になっていて(確か黒い紙?布?で中が囲われていたような記憶が・・・)、その中に入ると分かるのですが、押し入れ下半分の左側の壁の上の方に窪んだ小さな正方形の祠があり、そこに・・・当時は、それがなんであるか分からず・・・子供が作ったように大の字に手足を広げ、頭の部分は単なる棒で、目鼻も無く、簡素な着物を着させられている棒人形が二体祀られていました。  子供の頃は、それが神様とも知らずに単なる人形かと思い、取り出して遊ぼうとして、母親?か祖母?にひどく怒られたことがありました。  そして、いつの頃に、誰からかの記憶は無いのですが、「このオシラサマが祀られている押し入れの中に布団を持ち込んで寝ようとすると、不思議な力であっと言う間に押し入れから追い出される」ということを聞かされていたのです。  G氏は、子供心にも(そんな、馬鹿な!)と思っていたのですが・・・  で───、ここからは、ちょっと、恥ずかしい話なのですが・・G氏の父親も変わった人でして・・・ 「本当に追い出されるか、一晩、この押し入れの中で寝てみよう!」  などと言って、或る晩、座布団を手に持ち窮屈な押し入れの下の段に入り込み、自分で襖を閉めたのです。  しばらく、2~3分?は特に何事も起こらず、寝付きの良い父親であったので、なんだか、軽いイビキが聞こえてきたのですが・・・
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