9人が本棚に入れています
本棚に追加
その1 海岸縁のバラック集落
仮にG氏としておきますが───
今から十数年前のこと、彼が単身赴任で異動となった地方の町は海岸から陸に向かって2km程にある小さな町でした。
4月に空港で妻子と別れ、これから何年かの一人暮らしが始まる訳ですが、初めての土地、初めての業務ということで、今まで住む所も働く所も全て首都圏だったことが嘘のような状況となりました。
思い起こせば、初めて異動の場所を聞かされた時は、少し血の気が引きました。
まさか、こんなにも遠いところになるとは───、予想外のことに愕然としたことを覚えています。
しかし、仕方ありません。覚悟を決めて新しい土地、新しい職場、一人暮らしに慣れていかなければなりません。
そうして、新しい土地に慣れるように、無我夢中で頑張り、気づいてみれば一年ほども経っていました。
もともと自宅からは、はるかに遠い土地であったので、自宅のある首都圏に帰るときも飛行機を使うことがほとんどで、年に数回帰れれば良い方でした。
そんな、訳でその土地の職場の仲間とも飲みにいく機会は多かったのですが、土日の休みには一人で過ごすことが多かったのです。
そんな状況で、また季節も暖かく、いや、少しづつ暑くなってきました。
一人で居ると気分が落ち込んでくることも多くなり、ここは少し運動でもしようと思うようになりました。
しかし、ジョギングやランニングなどはしんどいので、何か良い運動は・・・と考えていると、そうだ!サイクリングならそんなにしんどくなく遠くまで気分転換できるぞ! と思いつきました。
そこで、ちょっと離れた少し大きな町にあるショッピングセンターに自家用車で行くと、なんと、ちょっとカッコいいサイクリング用?自転車が結構リーズナブルな値段で売っていました。
(これは、買うしかない!)
そう即決し、納品は後になるということで、届け先の住所を伝えて、少々ルンルン気分でアパートへと帰っていきました。
(続く)
最初のコメントを投稿しよう!