その1 海岸縁のバラック集落(完結)

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その1 海岸縁のバラック集落(完結)

確か、その次にサイクリングに行ったときでしょうか?  G氏は、その廃村のような集落の町名がどうしても気になってきました。 (200m程離れた道路沿いにある〇〇町の飛び地のようなものなのかな? それとも地図には載っていないけど、なにか別の町名があるのかな?) (ここは、試しに、降りて聞いてみるか!)  今、考えると、ずいぶんと無鉄砲なことをやったものだなと思います。  少々、楽観的だったのかもしれません。  G氏は、サイクリングロードの例の大きく曲がる左カーブ(そこは海岸のすぐ近くなので多少高架のようになっていました)を過ぎて、道が砂利道になったところで、自転車の速度を徐々に遅くしていき、砂利道に入って10m位のところで自転車を道の脇に停めると、降りてゆっくりと周囲を見回しました。  人の姿はどこにも見えませんでしたが、何か人の気配はするような気がしました。  今来た道の後ろを見ると、大きく曲がる高架の左カーブの脇にもいくつか、バラックのような平屋の家があり、中には窓が全開となっている家も見えました。 (誰かいるのかな?・・もし、誰かいたら聞いてみよう)  敢えて、戸口に行って戸を叩いてまでして聞こうとは思いませんでしが、何か人がいる気配もあるので、戸口や窓辺に人の姿を見たら聞いてみようと思ったのです。  しかし、それらの家に近づいても、人の姿は見えませんでした。 (あー、別に今日でなくても、この先、何回か通るうちにきっと人に出くわすこともあるだろうー)  そう思い向きを変えて自転車の方に向かおうとしたときに、その平屋の家の隣に一緒に建てられたような(おり)が設置してあることに気づきました。  その(おり)は全体としては古びた木張り製で、前面には鉄格子がはまっていたのですが、その鉄格子の間隔は大人の(こぶし)大で、割合広い間隔でした。 (あれ?(おり)? 大型犬のかな? いや、それとも何かの家畜用? でも餌箱も何も入っていないようだけど?)  ちょっと、不思議な気持ちになったそのときでした。  ふと、人の気配を感じ、振り向くと、そこにはちょっと眼を疑うような光景がありました。
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