その1 海岸縁のバラック集落(完結)

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 その家の戸口からいつの間に出てきたのか、なんと白いシミーズの下着姿の中年くらい?の女性が洗濯物を手に持って出てきており、戸口の前に設置してある物干しに洗濯物を干し始めたのです!  いくら、家のすぐそばといっても、サイクリングロードのある近くです。  ある意味、公道のそんな場所の近くに下着姿で姿を見せるなんて!  その瞬間にかなりびっくりし、ちょっとの間凝視してしまいました。  すると、その女性はチラリとG氏の方を見ましたが、何事もなかったように、そのまま洗濯物を干し続けています。  これは、見てはいけないものを見てしまったのかもしれない!  G氏はそう思い、急ぎ自転車に駆け寄って乗ろうとしたときに、さらにびっくりしました。  なんと、いつの間に現れたのか、全身が日焼けして真っ黒で、くすんだ青いTシャツと短パン?を身に着けた長身の男が腕組みをして、自転車の前方5mくらいの場所から、じっとG氏の方を見ていたのです!  喧嘩を売ってくる訳でも、何か因縁をつけてくる訳でもなかったのですが、全く身じろぎもせずに、じっとG氏のことを凝視してきます。  あせったG氏でしたが、ちょっと一礼をするようにして自転車に乗ると、急いで漕ぎはじめました。  その場所から5m、10m、20mと離れて、ちらりと後方を見ると、その長身の男は追いかけてくることもなかったのですが、ただただ、じっとG氏の方を凝視していたのです。  G氏は恐ろしくなり、さらに自転車の速度を上げて走り始めたのですが、走っていった方向は当然、自転車の進行方向だった杉?並木のやや暗い砂利道ロードです。  そして・・・杉?並木を抜け、例の関門のようなところも抜け、草原の中を通るアスファルトのサイクリングロードを抜けると、やがて道は防波堤の上の道となり・・・そして、サイクリングロードの終点であろう漁港の端に着いたのです。  ───、話としてはこれだけなのですが、その日の帰りはかなり迂回して、交通量の多い太い道路沿いを走って帰り、その後は、サイクリングロードを走っても、例の大きな左カーブが見えると引き返すようになったのです・・・終わり。 (その1・・・完結)
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