鳥族でうそつき

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鳥族でうそつき

 マモルはあの頃、お酒を出す店をやっていたがなかなか大変だった。今まであまり重病にはならなかった感染症が大きく変化したとかで、流行れば流行るほど重病化するとの噂もあって、食事会や飲み会などは極力やらないという会社が多くなった。  社会全体がそういう風潮にならざるを得ない状況に追い込まれていった気がする。マスコミの影響というか誘導も大きかったのではないかと思う。  僕はそんなマモルの店にミドリを連れて行った。 「トウマ、元気だったか。うちはこういうご時世だから開店休業みたいなもんだよ。何か食べるか?」 「まかせるよ。売り上げにほんの少しだけ貢献できればいいと思ってのぞいてみたんだけど、やってないかと思った」 「開けるのと開けないのとではどっちが得かわからないぐらいだけどね。親父(おやじ)がやってた頃の常連さんがまだ足を運んでくれるから」  まだ7時過ぎなのに店の奥の方に一組の男女がいるだけだった。マモルはカウンターに並んで座った僕たちの会話に混ざる。 「はじめまして。俺はマモル。トウマの古くからの友人ということで、よろしく。小中の時は夏休みや冬休みには祖父(じい)さんちに遊びに行ってて、その祖父さんちがこいつの家と同じ町内にあったんで、よく知らないまま遊んでた。俺たちが遠い遠い親戚みたいなもんだったことは最近になって知った」 「えーっ、そうだったんだ。知らなかった」
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