第三十章 夜曲 五

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「デトバは、俺の決心より先に、貫いていましたよ……」  どこを貫いたのか、聞かなくても、しっかりと見えている。 「そして、最初の一回で、受胎していました……後は、それを理由に、しまくっただけです」  津軽の口から、しまくったなどと聞きたくなかった。  やはり津軽は、硬派な二枚目で、いい兄貴分でいて欲しかった。 「……デトバ……」 「精力魔人……」  神界なので、魔人ではないだろう。 「そろそろ、デトバが来そうです」  そして、本当にデトバの気配がしてきたので、津軽を部屋から出すと、皆で手を振っておいた。  子供の為にも、これからがっつりやって欲しい。 「核竜……他に、デトバの気配がする者はいませんね?」  志村は、俺がデトバの気配が見えている事に気付いていたようだ。 「後は、塩家くらいのものですよ」 「塩家?」  まあ、塩家の事なので、試しにやってみたのだろう。塩家からは、デトバの痕跡の他に、那由多の痕跡も残っていた。そして、どうしたものか、黒竜の痕跡もあった。そのどれもが、存在を主張するほどに強く、同棲している恒河沙が翳んで見えるほどだった。
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