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※長らくお待たせしました!それでは続きをどうぞ…
…と、まあその後もフラッと〈爽風〉は現れて、翔くんとなっくんと三人で言い争う場面に、俺が止めに入る。そんな日常が心地良かった。
ある日、〈爽風〉は俺たちを呼び出した。いつものように遊ぶのかと思えば、どうやら違うらしい。
俺たちは不思議に思いながらも〈草原〉の拠点のボス部屋に入ると、突然〈爽風〉は
「暫くは会えない」
と言い出した。
「えっ…?」
冗談だと笑い飛ばしてはくれないような場の雰囲気に、これが事実なんだと自覚させられる。
〈爽風〉は困ったように眉を下げた。
「寮制の高校に入ることになったんだ」
「でっでも、そしたら組織は?仲間は?…俺たちはっ?」
「大丈夫。アイツらなら心配いらないよ。風華たちだって、永遠の別れなんかじゃ無いんだから」
諭すように話しかける〈爽風〉は、本当に穏やかで。
「また会える…?」
弱々しく吐き出された言葉は、自分でも分かるほどに震えていた。
「もちろん」
自信満々に答える彼に、いつの間にか自分自身も明るくなっていた。
「本当!? いつ会えるっ?」
声が弾む俺に、〈爽風〉は頭を撫でながら微笑んだ。
「ふふっ。いつ会えるかは、“草葉が全て知っている”よ。俺も楽しみにしてる」
__それから、彼は姿を消した。
…それが今、俺の目の前にいる。
「あ…え?」
相変わらず爽やかに笑う〈爽風〉…いや、颯太。
混乱する俺を見て可笑しそうに笑う。
「あははっ、びっくりした?」
「う…あ……っ」
「ん?どうした?」
優しく微笑んでこちらを覗き込む彼は、あの頃と変わったように見えた。だけど、残る面影は、どうしようもなく懐かしくて。
「うっ…。うあ……っ!」
思わず飛びついて抱き締める。
「おっ…と」
危うげも無く抱き止めてくれる彼に、あの日々が溢れかえる。涙が溢れて止まらない。
「うぅ……。バカ!ばかぁ…っ」
「…うん」
「これから…離れたりしたら…っ、許さないからっ…!」
「うん、もう離れない。離さないよ」
「うっ、うあ…っ」
泣きじゃくる俺をそっと優しく抱き締めると、頭にキスを落とされる。
いつもなら文句を言って突き放すのに、今はなんだか、とても心地良い。
翔もなっくんも穏やかに見つめている。クラスの皆から見守られながら、俺たちは抱き締めあった。
風華side end
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