ある所に、ホモの楽園がありました。ちゃんちゃん♪

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颯太side 今自分の腕の中にすっぽりと納まっている少年を、愛おしく思いながら頭を撫でる。 …最初はただ単に興味が湧いたから。 殺し屋組織で常にトップを誇り、受け持った依頼は100%成功させる。 しかし気まぐれで依頼を受ける。いくら大物から依頼が来たって、気分によってはしょうもない依頼を優先したりする。それでも尚、依頼が殺到し続けるのは、〈常闇〉への絶対的信頼と、それに値する実績があるからだろう。 __〈銀闇〉。 〈常闇〉の最高幹部として所属している、裏の世界に生きる者ならば知らない奴はいないほどの有名人。なんでも女子のような身長と、目を奪われる瞳と髪が特徴なのだとか。詳しくは聞いていないので、よく分からないが。 その時の俺は早く仲間の皆を守りたくて、ナメられないように強くなろうと焦っていたのだろう。 周りの組織という組織を潰し回って、気付けば仲間から「絶対に喧嘩を売るな」と言われていた〈常闇〉の拠点まで来てしまった。 一際装飾の多いドアの前に立つ。恐らくここがボスのいる部屋だろう。ここからでも分かる威圧感。 配下であろう奴らが俺を引き止めようとする中、扉を開けて中に入る。 中にいたのは、机の上の書類を片付けている、ボスであろう人物と、恋人らしい女性。 まず真っ先に女性を人質に取った。拠点にまで連れてきているんだ、相当愛されているのだろう。 首にナイフを当てても、脅しても、飄々としているボス。…心配していないのか…? 「どうぞ? 切ればいいさ」 不意に女性が瞼を閉じた。抗うわけでもなく死を受け入れた彼女に、小さく罪悪感が湧くが、仕方ない。これが裏の世界。こんな所に大事な恋人を連れてくるのが悪い。 恐る恐る女性の首に当てたナイフに力を込める。スーッと皮が切れて、その切れた跡を追うように、じわりと血が滲む。 「__君にできるなら、だけどね」 そんな声が聞こえたと思ったらいつの間にか床に倒れていた。 一瞬何が起きたか分からなかったが、すぐさま体制を整えるために起きあがろうとした。しかし頭の横に振り下ろされた足によって、それは叶わなかった。 (強い…) 女がここまで動けるものだろうか。明らかに場慣れしている。実力の底が見えない。
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