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EPISODE1・制服
駅前の大きな公園のど真ん中をズドンと貫くプラタナスの並木道。ここを抜けると、緑から一変、眼の前がピンクになる。桜並木が続いていくこの道を真っ直ぐ進むと、私が通う高校に辿り着く。
中学は、セーラー服だったから、高校は、絶対にブレザーのところって決めていた。だから、ブレザーの制服で身を包んだ私は、一応満足していた。
何故、一応なのかというと、本当は、隣の高校が良かったのだ。ブレザーだっていうのと同時に私の心を捉えたのは、ジャンバースカートで、更に、女の子もネクタイだって所だ。
私の通える範囲の高校の中で、そんな組み合わせの制服は、そこひとつ。その上、徒歩、もしくは、自転車で通える範囲なのだから、憧れても仕方ない。
だが、ここで現実が私を押し潰す…。
希望される高校に進学するには、少しばかり成績が足りないって、はっきり親の前で担任に言われたのだ。先生、もうちょっとオブラート包んでよね、本当。
私の頭は、誰が何と言っても文系なのだ。国語や社会は、すごく成績がいいのに、数学が致命的に悪い。定期テストもこれだけは、平均点スレスレか、それ以下。そんなので、希望がすんなり通るわけないのよね。
それでよ、親が進める高校は良い校風なのだとわかるが、私が通うのに、私が全然知らない学校ってどういう事?
担任が進める学校は、これから通う高校より、少しばかりレベルが上らしいが、そこもさっきと同じ理由で、気が乗らない。
結局、私が選んだのは、親と担任が薦める高校の間の立ち位置だ。なにより、制服がいいわよ。
紺のブレザーとベスト、同色のフレアスカート。白いブラウスがそれに映える。首元からは、希望していたネクタイはないけれど、棒タイが揺れてる。
真っさらな制服に、まっさらな気持ちで、私は、鼻歌など歌いながら、並木道を進んで行った。
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