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「…でも、ここ立入り禁止なんでしょう。みんなで登ってきてよかったのかな?」
「そういえば、顧問の先生もいないよね…。」
それは、素直な疑問というか、不安だった。
「今日は特別だよ。顧問の澤田先生は、私達を信頼してくれてるんだから、裏切っちゃ駄目だよ。だから、これから言うことは、演劇部として決めたルールだから守ってくれないと困るんだ。守れる?」
みんな守ると約束する。確認すると部長は続けた。
「下の部屋は、ここへ来る業者が点検に必要な道具なんかを置いておくための場所なわけ。だから、明かりも最低限なわけね。とにかく暗い。だから、この鉄板の蓋を開けて、自然の光を中に入れないと作業出来ないのよ。
下を使う時は、晴れた日を選ぶこと。鍵は、顧問の先生が持ってるから、事前に必ず使う日と時間を知らせること。
それから、ここが一番大事。ここに登って空を感じていいのは、ここを開ける当番に当たった子のみよ。みんなが、私も私もってなると、何かあった時にみんなに迷惑掛けるし、みんなに迷惑が掛かる。登った子は、自分の責任で外に出る。あくまでも、自分の責任よ。いいわね。」
「責任重大だね。」
「本当、面倒だね、大人って。」
「もっと信用して欲しいよね、生徒を。」
「だけど、そのおかげで、他の生徒が知らない風景が見られるんだからさ。」
演劇部の面々は、他の生徒達が出入りしない特別な場所を知っていて、そこを公然と使うことが出来る数少ない存在なんだと思ったら、ニンマリ笑うしかないじゃないの。
高い場所から下を見下ろせるくらいになってやるって、その時、ちょっぴりだけ思ったんだ。本当、ちょっぴりだよ。
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