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二人きりになると、グレゴールは私に駆け寄り、抱き起こした。
「どうしてここが?」
「聖獣たちのおかげだ」
グレゴールは、ウォルターとセシリアを指した。
「彼らが、ハルカに危険が迫っていると、マキ殿に伝えてくださったのだ。彼らの先導で、ここへ駆け付けた。非常時には、壁を通り抜ける力もお持ちなのだそうだ」
「そうだったんですね……」
私は、二匹の頭を撫でてやった。グレゴールが、せかせかと尋ねる。
「大丈夫か? エマヌエルにはどこまでされた? そもそも、なぜ王都へのこのこ戻ったんだ?」
「えっと……。頭を殴られましたけど。エマヌエル様には、まだ何も。ここへ来たのは、メルセデス様を装った偽手紙に騙されて……」
自分でも頭を整理しながら、言葉をつむぐ。グレゴールは、目をつり上げた。
「偽手紙だと? 詳しく聞きたいが、先に医者だな。あの二人の罪状には、暴行罪も加えるとして……」
「ちょっと待ってください!」
私は、グレゴールの言葉を遮った。
「さくさく進めないでください。大体、何ですか。あなたばっかり質問して。私だって、聞きたいことはあります。その……」
途中で私は言いよどんだ。いざグレゴールと向き合うと、質問する勇気が出なかったのだ。
(私を愛しているって、本当に……?)
「お前を愛しているという言葉なら、あれは本音だ」
私は、ハッと彼の瞳を見つめた。
「最初は、確かに殿下の側妃に差し出す目的だった。お前は器量が良いから、珍妙な言動さえ矯正すれば、きっと気に入っていただけるだろうと踏んだのだ」
グレゴールは、淡々と語った。
「俺のその計画は、実に順調だった。外見も内面も磨いて、いっそう魅力的になったお前を、クリスティアン殿下はたいそう気に入ってくださった。狙い通り……、だったはずなのに。何だかこう、もやっとするのだ」
グレゴールは、自らの胸を押さえた。
「俺は鈍いから、なかなか自分の気持ちに気付けずにいた。いや、気付かないふりをしていただけかもしれない」
グレゴールが、微苦笑を浮かべる。
「お前が離宮の裏庭で、エマヌエルに触れられていた時、無性に苛立った。強情な俺は、それでもお前への恋心を認められなかったのだが……」
でも、とグレゴールは照れくさそうに続けた。
「お前がクリスティアン殿下に、ギュウドンを振る舞っていた時。俺が食べさせてもらったことの無い料理を、殿下が先に召し上がったことが、ひどく悔しくてな。それで、ついに認めざるを得なくなったというわけだ」
もしかして、と私は思った。
(私が料理ができるという話、殿下にはわざと伏せていた……?)
「お前の作る料理を、俺は他の男に食べさせたくなかったんだ。だから、殿下には黙っていた」
私の疑問を見透かしたように、グレゴールは言った。
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