第十四章 異世界で成長できました

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 するとそこへ、それまで黙っていたグレゴールが口を挟んだ。 「殿下。調味料研究も大切ですが、普及の方が優先ではないでしょうか。米も手に入るようになったことですし」 「もちろんだ。まずは王都で広めよう」  クリスティアンが頷く。グレゴールは、さらにこう続けた。 「豚肉を代わりに用いれば、さらに多くの国民が食べられるようになります。ハルカによると、豚と生姜も合うのだとか。『ブタドン』だったか?」  ええと頷けば、クリスティアンは興味を抱いたようだった。 「ほう。それも是非、食してみたいものだ」 「そう言っていただき、ありがたい限りです。ではハルカには、『ブタドン』作りの方を先にさせようかと……」  グレゴールが、私をチラと見る。私は、ピンときた。私が修道院で、カロリーネと出会うことを心配しているのだろう。 (気遣いはありがたいけれど。でも私、逃げたくはないわ……)  私は、クリスティアンを見つめて告げた。 「殿下。もちろん豚丼もお作りいたしますが、私は醤油作りも早く取り組みたく存じます。よろしければ、今日これから修道院へ向かおうと思います」  グレゴールが、横で息を呑むのがわかった。クリスティアンが、機嫌良く頷く。 「そうか。前向きな奥方であるな。ではグレゴール、彼女を案内いたせ」 「……承知いたしました」  渋々といった様子で、グレゴールが答える。「『ブタドン』を楽しみにしておるぞ」というクリスティアンの声を背後に、私たちは部屋を出た。とたんに、グレゴールが眉をひそめる。 「本気で修道院を訪れるのか? 『ブタドン』作りの間に、時間稼ぎをして、違う作業場を用意しようと思っていたのだが……」 「やっぱり、そういうお考えでしたか。でも大丈夫です。私は、カロリーネ様とちゃんと向き合いたいのです」  力強く言い切ると、グレゴールは、しばらく私の顔を見つめていたが、やがて頷いた。 「そういうことなら、お前の意志を尊重しよう。だが、困ったことがあれば、いつでも言え」 「はい、ありがとうございます!」  修道院の場所は、王宮からそれほど遠くないという。いったんハイネマン邸へ戻ると大回りになるので、私はグレゴールと共に、すぐに向かうことにした。
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