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あれだけ雨に濡れたのに、風邪ひとつひかない頑丈な身体。
手痛くフラレても、朝はお腹が空いた。
「モーニングでも食べに行こうかな……」
本当なら、目覚めれば隣にアイツがいて、気まぐれに抱きしめてくれたりする朝だったはずなのにと寂しさが湧いてくる。
彼氏がいるって、私にとって最後の砦みたいなものだから。
「謝ったら……復縁できるかな」
そんな事を考えていたら、タイミングよく着信。慌ててスマホに飛びつくと、アイツではなくて親友の紗希だった。
──春菜、一緒にブランチに行かない?素敵なお店を見つけたの。
「行く!今から?」
スマホから笑い声が聞こえた。
──1時間後に、駅で。楽しみにしてて!
とりあえずお菓子で空腹をチョイ埋めし、仕度にかかる。
親友との気軽なブランチは、アレコレ気を使わずに済むから楽だ。
待ち合わせの駅は、日曜だからかいつもの慌ただしさがない。ゆったりした駅前で、紗希は遠くからでも目立っていた。
ストレートな手入れの行き届いた黒髪は、今日はゆるく纏められ、フレアスカートとマッチしている。
──いいなぁ……お姫様みたいで。
私を見つけるとブンブンと手を振ってくれている。何をしてもサマになる紗希。
「春菜、朝ごはん食べてないわよね?ボリュームがあるし、種類も豊富なバイキングだからね」
紗希は昔からよく食べるのに、ちっとも太らない。同じ量を食べる私は、すぐに体重に反映されてしまう。この差は何なのだろう。
それに……。どうして私なんかと友達でいてくれるのだろう。やっぱり、引き立て役なのかな。
「元気ないね?彼氏とケンカでもした?」
「ケンカじゃなくて、フラレたの……」
「そう……」
紗希はそれから、彼氏の話題に触れなかった。私もホテルのブランチが初めてで、取り皿を埋める事で頭がいっぱいになり、フラレた事はどこかへ飛んでいってしまった。
全種類制覇は出来なかったけど、メインの肉料理を何度もお代わりした私達は、コーヒーとミニスイーツを堪能する。
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