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「私はね、あんなヤツ別れて正解だと思う」
紗希の言葉にプリンを掬う手が止まった。
「どうして?最後の彼氏かもしれないのに……」
会社の同僚や上司は、私に彼氏がいるのを知ると「奇跡の彼氏」やら「最初で最後」などとからかった。いつ別れるか賭けをしている人もいた。
「最後?また会社の人達?馬鹿馬鹿しい……春菜はきっと素敵な人と結婚するよ?」
カラメルがやけに苦く感じる。紗希みたいに美人で、性格も良くて、スレンダーな女ならいくらでも恋愛できるだろう。だけどこっちは真逆なんだ!世の中見た目しか勝てないって、この身で体験済みなのだから。
少し後味の悪いブランチになった。私がムッツリと黙り込んでしまったから。
ショッピングに誘ってくれた紗希には悪いけど、お腹が痛いと嘘をついて駅で別れた。
心配そうな紗希には「食べ過ぎたから」と誤魔化して、家へと急いだ。
長い付き合いの親友でも、失恋したての私の気持ちなどわからない。だって紗希は、私が欲しいもの全部持っているもの。
……なんだか本当にお腹が痛くなってきた。
痛みはどんどん酷くなり、私は道路脇に蹲る。人は通り過ぎて行くのに、誰も私を助けてくれない。これが現実、これが私なのよ。
気がつくと、水玉模様がうっすら見えた。意識がハッキリしてくると、私はベッドに横たわっているのに気が付いた。
「ここは?」
「丸山さん、気が付かれましたか?」
いつの間にかベッド脇に、白衣を着た先生らしき人が私の顔を覗き込んでいる。
「私は……病院に?」
「そうですよ。ここは備仁クリニックです。あなたは食べ過ぎで倒れたから」
カァーッと顔が赤くなる。あの激しい腹痛はやはり食べ過ぎだったのか。
「運ばれるのがもう少し遅かったら、危ないところでした」
「ヒッ!危ない?死んでいたとかでしょうか?」
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