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「今ちょっと立て込んでるから、後で電話するね」
──絶対に電話してくれ!俺は待ってるから、ずっと待ってるから、春菜が許してくれるまで!
急いで部屋に駆け込み、握りしめたスマホを見る。履歴は確かに元カレだ。
「ミリリンにフラレたのかな……」
次の女が見つかるまでのつなぎだ。そうに決まっている。
わかっているのに気分はいい。男が私に執着するなんて初めての体験だった。
少し焦らしてやろうと、シャワーを浴びる事にした。鼻歌まじりに強めのシャワーを顔にかける。
「フフッ、許してくれだって!愛してるだって!初めて言われたかも〜」
シャワー後の体重チェックは無視した。せっかくの高揚感が台無しになるのは嫌だ。
この日の深夜に、私はアイツと復縁した。入院していた事を知ったアイツは心配のあまり駆けつけて、満たされた後、夜明けのコーヒーを一緒に飲んだ。
不思議な事に、退院してから私の男運が良くなった。アイツには優しくされ、会社の人間関係もガラリと変わった。馬鹿にしていたお局も上司もいなくなり、みんな私に優しくしてくれる。
「丸山さん。ずっと好きだったんだ……」
部署で一番のイケメン有能株に、突然告白された時には心臓が止まるほど驚いた。断っても断っても、仕事中に熱い視線を寄越してくる。
強引なくらいの押しに、たまらず陥落した私は、一夜限りだと自分に言い聞かせて魅惑の夜を過ごした。
通勤途中にはナンパされる。ランチに行けば連絡先を聞かれる。人生のモテ期に入った私は、おかしいと思いながらも溺れていく。
過去の不遇な時間を上書きするように、私は恋愛にのめり込んで行った。
「忙しいから、明日のデートは行けない」
アイツに平気で嘘をつき、選り取り見取りの男の中を泳いでいく毎日。
「楽しい!最高の人生!」
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