食後2錠の幸せ

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 グラフィックデザイナーのサトルと飲み明かし、フラフラで帰って来た深夜、そのままベッドに倒れ込んだ。  手が無意識に水のペットボトルを探す。 ──カサッ。 「んんー……薬?あー面倒くさい!後何日分残っていたかなー。今日くらい……いいよね……」  私は意識を手放した。  目が覚めると、激しい頭痛と吐き気。身体も少し熱っぽくダルかった。 「あー最悪……もう、休んじゃお」  有給を消化しろとあれだけ言っていた新しい上司や同僚が、私の欠勤の知らせに一斉に噛みついた。 ──この忙しい日に! ──まさか有給?何様? ──働けよ! 「何なの……酷いよ……」  布団の端っこを握りしめて、流れてくるチャットに項垂れる。優しいみんなが、これでもかと罵ってくる。  悔し紛れにぬいぐるみを投げつけ、テーブルの生ぬるい水をがぶ飲みした。  昨夜飲まなかった薬が、袋から飛び出していた。  カラフルなカプセル錠を口に放り込み、水で飲み込んだ。食べ過ぎで処方された薬なのに、不思議と二日酔いが楽になってゆく。 「ラッキー!二日酔いにも効くんだ」  重い身体を起こし「今から行きます」と返事しようとして指が止まった。 ──大丈夫?仕事は心配しないでゆっくり休んでね? ──差し入れ持って行こうか? ──春菜さんがいない会社は砂漠  さっきとは真逆の優しいコメントが次々に入ってくる。 「どう……なってるの?」  【私出社します】と書き込むと、嵐のような無理するなコール。上司などかなりの長文で説得してくる。  口の中のカプセル錠の後味が、完熟の果物を食べた時のように甘く広がっていく。 「この薬って……」  そうだ、この薬を飲みだしてから私のモテ期がやってきた。もうあんな激痛は御免だから、必ず食後に飲んでいた。昨夜以外は……。
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