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「ほんとさぁ、まじありえないんだけど聞いて?」
「え!ガチ?ウケるぅ〜。」
「放課後ゲーセン行かね?」
「今日も推しが尊いよぉ。新ビジュで目がァ!」
「彼氏がドリンク奢ってくれてね」
「あそこにいるの、お前の好きなやつじゃね?話しかけに行こうよ」
駅のホーム。改札口。何処もかしこも、キラキラとした会話で溢れかえっている。この中の誰も、私が一人なのに気が付かない。気づく余裕がないのかもしれない。
ストリーミング・サービスのアプリを開き、適当にプレイリストをタップする。有線イヤホンを耳に突っ込むと、流行りのポップスが流れてきた。
サビに差し掛かる直前、電車がやってきた。それは、サビのメロディーをかき消して、現実世界に風を巻き起こした。膝下のスカートがふわりと揺れる。
金属の塊は中から人を吐き出して、その分を取り戻すように私達が吸い込まれる。電車は待ってなどくれないから、列の最後にいた人が車内に収まると、慌てて階段を上ろうとしている人には見向きもせず、ドアをシューッと閉めてしまう。
私の降りる駅は5駅向こう。そこから乗り換えないと、高校にはつかない。
窓によりかかり、電車の揺れに身を任せた。
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