月とロケットと太郎と。

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次の日は1日中考えていた。 「そりゃあ、太郎の一生のお願いだし行ってあげたいけど…そもそもまじで行けるもんなのか。ただの素人高校生が作ったロケットなんて行ける確率の方がかなり低くない?」 俺は自問自答の末、結論した。 月まで行くなんてやっぱり無理だと思う。 太郎にも正直に危ないことはするなと言おう、親友だからこそ止めるべきだ。 「ねぇ聞いたわよ!あんた月に行くんだって?」 母さんの一言で食べていたハンバーグを吹き出しそうになった。 「…今なんて?」 「だから月に行くんでしょ?太郎君と一緒に」 「それ誰から聞いたの?」 「太郎君のお母さんからだけど…2人で月に行くんだって」 いや「2人で遊びに行く」みたいなトーンで言わないで? それにこんな大事な話、夕飯中にするのもおかしくない? もっと、こう、家族会議で決めるとかさ。 「まだ太郎には行くって言ってないし、母さんはなんでそんなに冷静なんだよ!?」 「え~だってすごいじゃない!月なんてそうそう行けるものじゃないわよ?」 大事な息子が手作りのロケットに乗って月まで行くことを“すごい”だけで片づけたよ、この人! 「不安じゃない?太郎が3週間で作ったロケットだよ?」 「でも太郎君だし大丈夫じゃない?昔から頭いいじゃないのあの子」 だめだこりゃ、全く心配してないな。 「それにお父さんもいいって言ってるわよ、ねっお父さん?」 「あぁ、いいんじゃないか?楽しそうで」 うちの家族にまともな人間はいないのか! 「おにいちゃんお月さまにいくの?がんばってね!」 妹だけが唯一の癒しだな、多分意味わかってないと思うけど。
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