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「大ちゃん!一緒に月へ行こう!」
「………は?」
俺がアイスを食べながら漫画を読んでダラダラと夏休みを謳歌している真っ最中にこいつはやってきた。
「一旦落ち着け。何の話だ?」
「高校最後の夏休みじゃん?で、思ったわけよ。そうだ、月に行こう!って」
そうだ京都行こう、みたいなノリで言うな!
昔から変な奴だと思ってはいたけど、まさかここまでとは。
「太郎、よく考えてみろ。月だぞ?」
「俺はいたって本気だよ!」
いつになく真剣な顔をしている。
仕方がない、とりあえず話は聞こう。
「分かった。”仮に”本気だとしてどうやって行くつもりだ?」
月なんて宇宙飛行士になるか某会社のあの社長さんみたいに大金を用意するしか方法はないだろ。
「ふっふっふ、こんなこともあろうかと夏休みの自由研究として作ってたんだよ。月まで行けるロケットをね!」
「…はい?」
え、ロケットって俺の思ってるロケットで合ってる?
まだ完成前だけど特別に見せてあげる!と意味が分からないまま案内されたのは太郎の家の裏山。
「どうだ!なかなかよく出来てると思わない?」
誇らしげに指さす先にはテレビとかでよく見るものより少し小さめのロケット。
「まじかよ…」
「ほんとは自由研究として作るだけで使うのはまだ先にしようと思ってたんだけど使ってみたいじゃん?」
ノリ軽っ!てか自由研究のスケールでかくね?
「まじの本物なのか?プラモデルとかじゃなくて」
「よし!そんなに疑うんだったら乗ってみる?」
「え、乗れるのか?」
「完成前だけど俺とお前の仲だし特別な!」
恐る恐る入ってみると中には小さい椅子と机が2つずつと見たことないような機械や部品が見える。
「がちでロケットじゃん」
「だから言ったろ?まぁまだ最後の仕上げが残ってるんだけど2・3日で済むしそれが終われば乗れるはず」
「いつから作ってたんだ?」
「設計は去年からで本格的に作り始めたのは夏休みが始まる頃からかな」
ってことは3週間でこれかよ!?
そういえば昔から理科系は得意だったな…
って、得意の域超えてるわ!発明家かNASAの研究員にでもなれるぞ。
「で、ここからが本題なんだけど…月まで一緒に乗ってみない?」
「……いやいやいやいや、それはさすがになぁ」
いくら親友だとしても素人の高校生が作ったロケットに乗るなんて正気の沙汰じゃない。
ほんの少しだけ乗ってみたいとは思ったけども。
「一生のお願い!一人で乗るのは怖くてさ」
あの太郎が一生のお願いを使うとは…
小さい頃に「そんなもの絶対に使わない!」って謎の意地を張ってたのに。
「ちょっと考えさせてくれ」
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