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「とは言ってもね〜、どこ行こうかな」
ソファーで寝転び寛ぎながら、観光雑誌を開く。ぱらぱらめくると有名な場所から穴場スポットまでいろんなお店が出てきた。
朝食を食べ終えて改めて部屋を見て回ろうとうろうろしていると。爺さんが観光雑誌を持って部屋に来てくれたのだ。
今はソファー横の椅子に座ってお茶を入れくれてる。爺さんは立ってるって言ってくれたんだけど、俺が「座って一緒にお話しよう?」って言うと笑って座ってくれた。
「おすすめの場所とかってあるの〜?」
「そうですね〜。食事だったり買い物だったりと、用途別に御座いますが。黒ノ様は見てみたい場所とかありますかな?」
「うーん、一番はお土産かな?いろいろあって賑わってる場所がいいかもです!」
それでしたら、と爺さんが教えてくれたのはクリスマスマーケットがやってる場所だった。露店が出てて、いろいろ売ってる場所。買い食いも出来るみたい。
確かにめちゃくちゃ楽しそうだねぇ、でもやっぱりこういう場所だと澄明と行けたらなぁとか考えちゃう。
「澄明忙しいもんねぇ」
「坊ちゃんも寂しがってると思われますよ」
「なんかね、澄明と一緒にいる時間って〜あっという間に感じるんだよね」
澄明も同じだったら嬉しい。なんてついついぽろぽろと話してしまう。爺さんが優しい笑顔で優しく耳を傾けてくれるからかな。なんかこう、澄明の周りって優しい人が多いなって思う。青江さんもそうだし、昨日初めてあった仕立て屋さんとかも。
「楽しぃなあって思うことがあると、次の日には思い出になっちゃって。今の現実で事が起こってるっていう実感が無くなっちゃうんだよね」
「それは良いことですよ。思い出として残したいものがあるんですから。すぐ忘れるよりも思い出として残ってて、その時の想いに浸れるというのは素晴らしいことでございます」
「…そうなんだぁ、へへ。うれしぃねえ〜」
にっこにっこしてしまう。確かに、澄明とあった出来事は全て覚えていると言っても過言じゃない。あの時こんなだったよな〜とか、いつも思い出してニヤニヤしちゃうのだ。
俺がごろごろと嬉しさに浸ってると、爺さんが手を取ってくれる。ゆっくりと優しく撫でてくれる。暖かくて少し硬い。シワが張るけど張りもあって、しっかりとした男性の掌。
「黒ノ様は坊ちゃんを愛してくださるのですね。爺はとても喜ばしいです」
「うん。そういえば爺さんは澄明が赤ちゃんの時から傍に居るの?」
「はい。澄明坊ちゃんがお生まれになった時からお傍におります。正確にいうと嗣音(ツグネ)様が幼少の頃からになります」
嗣音様は澄明父の名前。ずっと傍に居るんだねぇ、爺さんが居てくれたら怖いものが無さそうだよね。でも澄明父の小さい頃ってどんななんだろ…あんまり想像が出来ないな?
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