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瀬里菜がずっと私を抱きしめたり肩をさすったり頭を撫でたりして、次第に私の涙と心のヘドロは溶けていった。
「刺身、ぬるくなっちゃったね……。ごめん」
「うまいき、大丈夫」
瀬里菜は、ビールを冷蔵庫から新しく持って来て、三人分のコップに注ぎ直した。
「あれ、そういえば慎也は……?」
瀬里菜が別室やトイレを覗きに行った。すると、玄関がガチャリと開いた。
「ただいま。おんちゃん、連れて来たで」
「わー、おんちゃん、こんばんは。いらっしゃい。上がって上がって」
瀬里菜がぱたぱたと私の元へ走って来て、耳打ちした。
「さっきの物騒な薬、ほんまもんなが? そんなもん、はよう捨て」
泉くんの後ろから、お父さんが入ってきた。泉くんにお酒の瓶を渡している。
「ううん。私にそんな知識ないもん。ただの睡眠薬にしかなってないはず」
「ほいでも、はよ捨てよ」
にこっとして、瀬里菜は台所へ行ってコップをもう一つ取り出した。
瀬里菜、泉くん、お父さん、私で食卓を囲んだ。
「ほいたら、久々の再会に、かんぱーい」
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