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「ラムネ、買いすぎでしょ」
宴会を終えて、ラムネの入った袋を提げて、お父さんと並んで歩く。家まですぐそこだけど、真っ暗で静かな夜空に響く、コオロギや鈴虫の音が心地いい。
「お父さんの分もあるの」
お酒が入って、少し陽気になったお父さんは、私を肘で小突いた。
家に着くと、瀬里菜からメッセージが届いた。
『おんちゃんの前では言わんかったけど、中学の時の南部、覚えちゅう? 麻衣子に会いたいって言いゆうよ。えい?』
あー、あのダブルデートの南部くん。
そっか、瀬里菜目当てじゃなかったのか。私に好意があるってことかな……。それはそれで、変わった人だけど。
『うん、覚えてる。いいよ、久しぶりに会ってみる』
ポケットの中の薬の包みをぐしゃりと潰してティッシュにくるみ、洗面所のゴミ箱に捨てた。
手を洗う自分が、鏡に映る。
「ふむ」
手を拭いて、スマホを取り出した。
会う日までにちょっとでも痩せられるトレーニング動画、探そうっと。
<完>
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