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その日の夜、セルジオは寝付けずにいた。
ゴソッ・・・・
身体を起こしベッドの上で膝を抱える。窓から青白い月明かりが差込みセルジオを照らしていた。
試しの日に目にした団長の少し哀し気な眼が気になっていたのだ。
『なぜ?王国全貴族騎士団を巡る事をあのように哀し気な眼で語られたのか?バルドへ聞く機会を失ってしまったな』
ぼんやりと己の膝頭を眺め考えていた。
ゴソッ!
「セルジオ様・・・・眠れませんか?」
隣で寝ていたエリオスがセルジオに声を掛け起き上がる。
「エリオス、すまぬ。起こしてしまったか?」
「いえ、大事ございません。どこぞ痛みますか?」
連日の団長との手合わせで傷だらけのセルジオの身体を気にかける。
「いや、どこも痛まぬ・・・・考えていたのだ。ずっと・・・・」
また自身の膝頭を見つめる。
「私でよろしければお話し下さい。オスカーは私が眠れぬ時は話しを聞いてくれます。眠れぬのは頭の中が考えで詰まっている為だと。全て吐き出せば自然と眠れると申していました」
ベッド脇に向かい合わせで置かれた長椅子で横になるバルドとオスカーは2人のやり取りを静かに聴いていた。
「そうか。私は眠れぬことが当たり前なのだ。毎夜、眠れぬのだ。小さな頃はバルドの懐で揺られていた故、眠れずとも安んじていられた。今は・・・・大きくなったからな。バルドの懐へ入りたくとも入れぬ」
セルジオは少し恥ずかしそうにエリオスへチラリと目を向ける。
「左様にございますか。セルジオ様、恥ずかしがらずともバルド殿の懐に入れて頂けばよろしいのです。私など、訓練施設では毎夜オスカーに抱えてもらい眠ります。初めて鶏の首を落とした時など、目を閉じると真っ赤に染まった己の手が浮かび恐ろしくオスカーの懐で泣きながら眠りました」
エリオスはニコリと微笑んだ。
青白い月の光に照らされた2人の金色の髪は蒼く輝きまるで天使の様に見える。
「セルジオ様、お話し下さい。頭の中を空に致しましょう」
エリオスはそっとセルジオの手の上に己の手を乗せた。
「感謝もうすエリオス。ずっと・・・・考えていたのだ。団長の試しの日に王国騎士団を巡ることが決まった。その時の団長の眼が哀し気だったのだ。今はそれぞれに動いている騎士団をまとめ、一団となる為の策であろう?ならば希望に満ちているのではないかと私は考えたのだ。
されど・・・・団長は哀し気な眼をしておられた。なぜなのかをバルドに聴きたいと思っていたのだが・・・・ずっと聴けずにいる。手合わせをするとわかるであろう?相手の・・・・なんと言うのか・・・・その者の輝きと言うのか・・・・
団長は眩しいほどにキラキラとされ力強い光を感じるのだ。力強くも清らかで美しいと感じるのだ。されど・・・・あの時の団長は深く濃い藍色をされていた。そのことが気になっているのだ」
セルジオは膝頭を眺めながらポツリ、ポツリと話すと窓から差し込む青白い月明かりに自身の手をかざしてベッドの上に影をつくった。
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