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お泊り会といえば映画鑑賞会だ! と思って、「映画でも見ませんか?」と提案すると……。
「乃々花ちゃん、こっち」
それならと千紘さんに連れられてやってきたのは、シアタールーム。
違う。私が想像していた映画鑑賞会となんか、違う
「……」
私が想像していたのは、リビングの一番大きいテレビでソファに座りながら、お菓子とジュースを片手にわいわいきゃっきゃとコメディ映画を流し見るというかたち。
こんな、どう見ても防音で大型スクリーンに音響設備の整った部屋で、ファーストクラスのシートみたいな座席が用意されたものは、違う。
「どういうジャンルが好み?」
「……あの、普通にリビングで見るのはダメですか?」
この部屋で映画を見ると、本当の鑑賞会になる。
間違いではないけど、ここで見ると雰囲気がだいぶ違う。
「えっ、いいけど。リビングのテレビ小さいよ?」
「十分ですっ」
小さくないです。
確実にうちにあるリビングのテレビ(70インチ)より大きかったです。
「あっ、着替えを貸していただけないでしょうか?」
泊まるつもりできていなかったため、着替えの用意がない。
千紘さんは「ああ、そうだったね。ちょっと待ってて」と言って、リビングから出ていくと、5分も経たずに戻ってきた。
「これ、半袖と短パンの寝間着なんだけど、結局買ってから一度も着てないんだ。サイズ的に着れそうなのこれくらいだったんだけど、どうかな?」
「ありがとうございます。着替えてもいいですか?」
「うん。リビングを出て廊下を進んだ一番左の部屋が客間みたいなものだから、今日はそこを使って」
「ありがとうございます。では、ちょっと着替えてきます」
「うん。僕も着替えてるから、急がなくていいからね」
「はい。ありがとうございます」
寝間着を受け取って、リビングを出た。
千紘さんに言われた通り、長い廊下を進んで一番左の部屋のドアに手をかける。
「……ホテル?」
ドアを開けると、そこは高級なビジネスホテルのような部屋だった。
ダブルベッドの右隣にはソファとテーブルがあり、左隣にはデスクと椅子がある。
部屋の中にはもう一つドアがあり、そっと開けてみると、
「うん。ホテルだ」
トイレとシャワールームがあった。
間違いない。ここはホテルだ。
心を落ち着かせるためにお手洗いを借りて、素早く寝間着に着替えた。
「……」
半袖と短パンと言ってたけど、私が着ると上は七分袖のトレーナーで下は八分丈のずぼんだった。
上も下もさすがにだぼだぼだったけど、ウエストは調節ひもがついていたからぎゅうっと固く絞れば大丈夫だった。
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