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部屋を出てリビングに戻ると、すでに着替え終えた千紘さんがソファに座っていた。
上下黒の部屋着に着替えた千紘さん。
私服でこんなにラフな格好の千紘さんを見るのは初めてだった。
「お待たせしました」
「……うん。全然待ってないよ」
千紘さんはじっと私の姿を見つめていたけど、すぐにいつも通り穏やかな笑みに変わった。
「おやつと飲み物って、うちにはこれくらいしかなかったんだけど……」
申し訳なさそうにおやつと飲み物を披露する千紘さん。
千紘さんが用意してくれたおやつは、見るからに健康に良さそうな野菜チップスやドライフルーツなどの素材を生かした系だった。
そして飲み物も、瓶に入った濃厚果汁のリンゴジュースやオレンジジュース。
本音を言えばもっとジャンキーなものが良かったけど、そういうものは私の家に来てもらった時にしようと思った。
「ありがとうございます。嬉しいです」
「ごめんね。次はおやつもジュースも乃々花ちゃんが好きそうなものを用意しておくから」
なんか違うという気持ちが顔に出ていたんだと思う。
千紘さんの心苦しそうな声が申し訳なかった。
「でも、これはこれで楽しいです」
確かに私が想像していた映画鑑賞会とは色々だいぶ違うけど、これはこれでなんか面白い。
こんな感じの映画鑑賞は初めてだ。
「なに見る?」
「千紘さんは普段どんなジャンルを見てます?」
千紘さんはリモコンでネット配信サービスの開いた。
「僕は、推理ものとかミステリー、サスペンスとか、だいたいそんな感じかな。乃々花ちゃんは?」
「私はコメディです。何も考えずに頭の中空っぽで見れるものが好きです。海外のアニメもよく見ます」
「へえ。僕コメディは全く見ないなぁ」
「じゃあ今日はコメディにしましょう!」
「いいね。おすすめとかある?」
「最近だと、〈ぶっ飛んだ埼玉〉とか面白かったですよ」
「あ、それ知ってる。見たことないけど、ヒットしたよね」
「はい。もう一回見たかったのでいいですか?」
「いいよ。楽しみだなぁ」
あ、でも……大丈夫かなぁ。
結構低俗な映画(ほめてる)だけど。
勧めてから映画の内容に不安になったが、これもお互いをよく知るためだ。
私はこういうものが好きな人間だと知ってほしい。
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