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「すみません。千紘さんの可愛い顔が見たくて」
「あれ可愛かった?」
「はい! とっても」
「そう、まあ君がそう言うならいっか。じゃあ、僕も乃々花ちゃんの可愛い顔見たいんだけど」
「えっ、いいですけど」
やはり自分も引っ張られるのかと思って、覚悟して待っていたのに。
「……」
「……」
いつまで経っても私の頬は伸びない。
千紘さんは私の頬を手のひらで包み込んで、じっと見つめているだけだった。
「あの、びょーんってしないんですか?」
「うん」
肩透かしを食らったような気分だ。
てっきり自分も同じことをされると思っていたのに。
「そんなことをしなくても乃々花ちゃんは十分可愛いから」
「……あ、ははは」
こんな至近距離で、真っ直ぐに可愛いと言われると、さすがの私でも恥ずかしくなってしまう。
「……可愛いなぁ。本当に」
そう言った千紘さんの瞳が、あまりにも綺麗で、そのまま吸い込まれてしまいそうだった。
気のせいか、どんどんお互いの顔が近づいているような気がする。
お酒のせいで距離感がわからなくなっているのだろうか。
だけど、千紘さんの吐息が私の唇に触れたことで、それは気のせいではないことがわかった。
もう二人の距離が残り10センチほどしかないところで、ようやく私は口を開いた。
「っあの……顔、くっついちゃいます」
さすがに、これ以上近づいたらぶつかってしまう。
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