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如月さんはコービーを一口飲んで、また喋り始めた。
「倉木先生は脚本家だけど、映像化した作品を小説にして書いたりもしているの。倉木先生を担当してる出版社ならツテがあったし、たまたまあたしの大学の後輩もいたから話を聞いたのよ」
如月さん、そんなことしていたんだ。
千紘さんがもしも危ない人だったら私が傷つくから?
ありがたいし、すごく嬉しいけど、千紘さんはそんな人じゃないから調べても何も出てこなかったんじゃないかな……。
「それで、どうだったんですか?」
でも、調べた結果が気になってつい話の続きを催促しまった。
「人と距離があるのは本当だけど、傲慢なわけではなくて仕事に手を抜かない誠実な人だってあたしの後輩は言ってた」
「……そうですか」
わかってはいたけど、千紘さんが間違った評価をされていなくて安心した。
「女性嫌いっていうのもちょっと違くて。自分に対して下心を持って近づいてくる女が嫌いなだけで、他意のない女性に対しては丁寧な対応をする人だって。だけど、あの容姿だし才能もあって、成功者だからさ、ほとんどの独身女は倉木先生に取り入るような態度をとっちゃうわけじゃない? だから近づく女を断固拒絶してたらいつの間にか女嫌いって言われるようになっちゃったんだって」
「……なるほど」
だから女性なのにお店のスタッフさんたちには丁寧な対応をしていたのか。
千紘さんの行動と、如月さんの言葉は辻褄が合っていた。
「そしてさっきの朽木ゆらだけど」
「あ、はい」
「倉木先生に執拗に言い寄って業界から干された女がいるって教えたでしょ」
「はい」
「あの女がそれよ」
「えっ! 彼女が?」
あの綺麗な女性が、業界から消されたというその人。
如月さんはそれを知っていたからあんな態度をとっていたのか。
「これ、公になってないことだから絶っ対オフレコね!」
如月さんが今までよりも声のボリュームを抑えて私にくぎを刺した。
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