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「だけど、まさか乃々花のところに来るなんて……しかも自分がやばいことしてるって完全に自覚なかったわよね。むしろ自分が倉木先生を守ってるみたいな……あーこわっ」
「……私、千紘さんの近くにいない方がいいんでしょうか」
千紘さん、怖かっただろうな。
相手が女性であっても、そんなことをされたら一人で道を歩くことすらできなくなりそうだ。
それに、そんなことがあればますます女性のことが嫌いになりそう。
私の存在が彼女を刺激して、また千紘さんに危害を加えるようなことがあったら……。
「あんたは何も悪くないんだから堂々としてなさいよ。まあただ、必要以上に気をつけるに越したことはないわよね」
「……はい」
「とりあえずさっき編集部にも連絡しておいたし、後輩のとこにも連絡入れとく。母親が病院に入院させるって話だったけど、あの感じだと無理だったのね」
「……私、どうすればいいでしょう」
「んーひとまず、乃々花はしばらく家にいなさい。あの感じだと妄想が爆発したらまたなんかやりかねないし。向こうの編集長と相談して彼女の母親に連絡入れるから、それまで自宅待機。食事もマンションまであたしが持っていくし、ちょこちょこ様子も見に行くから安心しなさい。その間、仕事もほどほどでいいから」
「……はい。ありがとうございます。あの、このことは」
「大丈夫。言わないわよ」
誰にと言わなくても如月さんはわかっていたようだった。
私はほっとして、胸をなでおろした。
過去にそんな大変なことがあったのに、私を巻き込んだと知れば、優しくて繊細な彼はきっと気に病むだろう。
なによりも、私のせいで万が一でも千紘さんに危害が加わるようなことがあったら……そんなこと絶対に嫌だ。
千紘さんが傷つくところなんて見たくない。
自分の身の安全のため、千紘さんを危険から守るため、その日から私は自宅待機となった。
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