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《乃々花ぁっ朗報よー!!》
テンションの高い如月さんの声にちょっとだけいらっとしたのは秘密。
「如月さん、声がでかいです」
《おかまは声がでかいのよ、って今はそんなことどうでもいいのっ!》
「なんですか」
《今日の午前の便で朽木ゆらがオーストラリアに行ったわよ!》
「…………ええっ!!」
如月さんの言葉がすぐには理解できなくて、反応が遅れてしまった。
《昨日、彼女の両親と彼女とあたしたちで面談して、倉木先生と乃々花にも二度と近づかないって書面でも交わした。もう安心していいわよ》
「……じゃあ、もう、外出ていいんですか?」
《ええ。もう大丈夫よ》
「うわああー」
これで千紘さんに会える。
やっと、やっと会える。
嬉しさと興奮で、胸のドキドキが止まらない。
《それで出所直後で悪いんだけど、》
出所って、私は何も悪いことしてないですよ。
《後輩と向こうの編集長が乃々花に直接謝罪したいってこっちの編集部に来てるのよ》
「えっ、謝罪なんていいですよ」
《あたしもそう言ったんだけど、乃々先生に迷惑かけたのもこっちの後処理が甘かったからってめちゃくちゃ反省しててさ。まぁ、今回の件でうちの社長が相当向こうをどやしたってのもあるんだけどさ》
「ええっ村瀬さんが?」
《そうよー。言ったでしょ? あんたはうちの大事な大事な金の鶏なんだから》
金の鶏って……光栄だけど。
《だから悪いんだけど、一度編集部に来てもらっていい?》
「はい。それは構いません」
本当はすぐにでも千紘さんに会いたかったけど、そういうことなら行くしかない。
如月さんにも編集部の人たちにもお世話になったのだから、私の方こそ直接お礼を伝えなければならない。
電話を終えて、私はすぐに支度をした。
久しぶりに外に出ると、太陽が眩しい。
部屋の中で浴びる太陽と、地上に出て浴びる太陽は違うようだ。
私は少し伸びをして、予約していたタクシーに乗り込んだ。
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